T氏です。トランプ大統領と文在寅韓国大統領の首脳会談後に行った共同会見で韓米自由貿易協定(FTA)の再交渉に着手する以降を正式に表明したのでFTAに付いて調べてみました。
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首脳会談で議題に上がったFTA
米国のトランプ大統領は30日午前(日本時間同日夜)、ワシントンのホワイトハウスで開催された文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領との初の首脳会談後に行った共同記者会見で、「米国は多くの国に対して貿易赤字がある。これ(貿易赤字が続くこと)を認められない」と述べ、貿易不均衡を是正するため、すぐに韓米自由貿易協定(FTA)の再交渉に着手する意向を正式に表明した。
トランプ氏は「米国は長期間にわたり、多額の貿易赤字を抱えており、これが(米国が)20兆ドル(約2250兆円)の赤字を抱えている理由」と主張した。
その上で、韓国がアラスカ産の天然ガスを導入する意向を示したことに触れ、「貿易赤字を改善できると思う」と期待を寄せた。
韓米自由貿易協定(FTA)とは何?
2007年6月、米国と韓国は自由貿易協定に署名した。協定の主たる内容には、農畜産物、自動車、繊維の自由化に加えて、法律サービス、会計サービスなどの段階的市場開放も含まれる。交渉の焦点となったのは自動車と農畜産物だが、自動車では輸入関税の相互撤廃に合意した。また韓国は、コメは自由化の対象外としたものの、現行40%の牛肉の輸入関税を15年で撤廃するとした他、オレンジ、リンゴ、豚肉など多くの農畜産物で5〜20年後の関税撤廃に合意した。2012年3月15日に自由貿易協定は決定した。
環太平洋戦略的経済連携協定との類似性
環太平洋戦略的経済連携協定の交渉分野ごとに、該当分野に相当する、米韓自由貿易協定の章が次のようにまとめられている。
- 物品市場アクセス – 第2章:内国民待遇及び物品市場アクセス 第3章:農業 第4章:繊維 第5章:医薬品
- 原産地規則 – 第6章:原産地規則・原産手続き
- 貿易円滑化 – 第7章:税関行政及び貿易円滑化
- 衛生植物検疫(SPS) – 第8章:衛生植物検疫措置
- 貿易の技術的障害(TBT) – 第9章:貿易の技術的障害 貿易の技術的障害に関する協定を参照のこと
- 貿易救済(セーフガードなど) – 第10章:貿易救済
- 政府調達 – 第17章:政府調達 政府調達に関する協定を参照のこと
- 知的財産権 – 第18章:知的財産権
- 競争政策 – 第16章:競争
- 越境サービス – 第12章:越境サービス貿易
- 商用関係者の移動 – その他「2011年2月10日付合意議事録」
- 金融サービス – 第13章:金融サービス
- 電気通信サービス – 第14章:電気通信
- 電子商取引 – 第15章:電子商取引
- 投資 – 第11章:投資
- 環境 – 第20章:環境
- 労働 – 第19章:労働
- 制度的事項 – 第22章:総則規定・紛争解決
- 紛争解決 – 第22章:総則規定・紛争解決
交渉内容等の守秘義務が課されていた点も類似する(米韓FTAは締結後3年間、環太平洋戦略的経済連携協定は発効後または交渉最後の会合後4年間)。
毒素条項
「毒素条項」という主張は出所が不明だが、韓国外交通商部「わかりやすく書いた、いわゆる米韓FTA毒素条項主張に対する反論」(2011年1月)からは、内容が以下のようにまとめられる。
- サービス市場のネガティブリスト – 開放しない分野だけを指定する条項で、開放範囲が意図せず大きくなる。
- ラチェット条項 – 「ラチェット規定」の節に述べたとおり。
- 未来最恵国待遇条項 – 将来、他の国とアメリカより高い水準の市場開放を約束する場合、自動的に米韓FTAに遡及適用される。
- ISDS手続き – 韓国に投資したアメリカ資本や企業は、韓国で裁判を受ける必要がなくなる。
- 間接収容による損害補償 – アメリカ資本の不法行為で米韓FTAが国内法に優越(履行法102条が反論材料)。政府の政策や規定により発生した、間接的損害も補償(たとえば韓国は土地利用が公共の福祉による制限を強く受ける法体制だが[22]、その秩序が米韓FTAで覆る)。
- 非違反提訴 – FTA協定文に違反しないときでも、政府の税金、補助金、不公正取引是正措置などの政策により、「期待する利益」を得られなかったことを根拠として、投資家が相手国を国際仲裁機関に提訴できる。
- 政府の立証責任 – 科学的立証責任。
- サービス非設立権 – 相手国に事業所を設立せずに営業できる。
- 公企業完全民営化および外国人所有持分撤廃 – 国営企業民営化入札にアメリカ企業や資本が参加できる。
- 知的財産権直接規制条項 – 韓国政府を介さず規制するため、薬などの生活必需品が暴騰する。
- 金融および資本市場の完全開放 – 外国投機資本が国内銀行の株式を100%所有できる。
- 再協議不可条項 – 上記11種類の条項はいかなる場合でも再協議ができない。
「毒素条項」に対する韓国政府の反論
韓国外交通商部「わかりやすく書いた、いわゆる米韓FTA毒素条項主張に対する反論」(2011年1月)からは、韓国政府による反論が以下のようにまとめられる。
- サービス市場のネガティブリスト – 開放範囲は留保表で制限される。
- ラチェット条項 – 適用は留保表で限定される。
- 未来最恵国待遇条項 – 適用は留保表で制限される。
- ISDS手続き – 国際仲裁機関に訴えれば公平である。
- 間接収容による損害補償 – 「相当程度の剥奪」がなければ間接収容にならない。また、「正当な」公共福祉のための措置は間接収容にならない(司法機関へカギ内の判断を委任)。
- 非違反提訴 – 原告に厳しい立証責任が課される(制度が利用されにくい)。
- 政府の立証責任 – 原告に立証責任がある(どちらも原告になりうるから公平)。
- サービス非設立権 – 留保表で制限される。
- 公企業完全民営化および外国人所有持分撤廃 – 米韓FTAで直ちに外国人持分上限の変わることはない。
- 知的財産権直接規制条項 – 条文がない。
- 金融および資本市場の完全開放 – もともと開放的。政策で調整可能。
- 再協議不可条項 – 条文がない。
難しいですね。
FTAの簡単に要約すると
- FTAは一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない。
- 狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できないという決まりも盛り込まれている
- 今後は韓国が他の国とFTAを締結した場合においてその条件が米国に対する条件よりも有利な場合は米にも同じ条件を適用する
- 自動車分野で韓国が協定に違反した場合又は米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合には米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする
- 韓国に投資した企業が韓国の政策によって損害を被った場合は世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できるが韓国では裁判は行わない
FTAは韓国に取って不平等条約だったのです。
韓国にだけ適用される条件
- 米国企業が期待した程利益を得られなかった場合には韓国がFTAに違反していなくても米国政府が企業の代わりに国際機関に対して韓国を提訴できる
- 米国の企業が営業がうまくいかないときには米国政府は韓国を提訴することが許される
- 米企業・米国人に対しては韓国の法律ではなく韓米FTAを優先適用する
- 知的財産権に関するものとしては米国企業が韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようにもなっています。
- 著作権違反という理由をつけることで強制的にできる取り決めになっています。
FTAは米国有利のものなのです。
まとめ
アメリカは多くの国に対して貿易赤字がある。これ(貿易赤字が続くこと)を認められない」と述べ、貿易不均衡を是正するため、すぐに韓米自由貿易協定(FTA)の再交渉に着手する意向を正式に表明した。
しかし既にアメリカ有利なFTAこれをどう言うふうに再交渉していくのか今後も気になります。
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